この冬はインフルエンザ、その他の呼吸器感染症、コロナウイルスなどの感染症が混在することが予想されます。インフルエンザとコロナウイルス感染の区別は難しいというのが現状です。
インフルエンザなどワクチンがあるものはできる限り接種して、疾病を減らす必要があると考えます。ワクチンの本数には限りがありますが、より多くの児に集団免疫をつけてもらうほうが良いと考え、接種回数の見直しを検討しました。日本では13歳未満は2回、13歳以上が1回です。一方、CDCのガイドラインでは、9歳以上は1回接種、3歳から9歳未満児でも前年までに2回以上のワクチン接種があれば1回接種で良いとなっています。 海外とはワクチンの種類、抗原量等は異なっているので、そのまま日本に当てはめることは容易ではないと思いますが、日本の治験データを見ると、3歳未満は1回と2回の接種で抗体価に大きな相違がありますが、3歳以上13歳未満では大差がありません。その他の会社の製品のデータも同様です。
当院では、①小児への接種回数を減らすことによって、余った分のワクチンでより多くの児にインフルエンザワクチンを接種することに力を入れる、つまり1回接種の小児の接種人口を増やして集団免疫をつける(経済的に2回は接種できないという理由で接種していない家庭にも1回接種を推奨する)。
但し、低年齢児は感染時の重症化のリスクが高いこともあり、当院ではCDC式と日本式の間をとって、今回のインフルエンザワクチンの接種回数を下記のようにしたいと考えております。
生後6ヶ月〜年長さんまで
- 2回接種
小学1年生~小学3年生
-
過去にインフルエンザワクチンを接種したことが無い、又は1回しか接種したことが無い
→ 今年は2回接種が必要 -
過去に2回以上インフルエンザワクチンを接種したことがある(複数年でも可)
→ 今年は1回接種のみ
小学4年生~
- 過去の接種歴に関係なく、すべての方が1回接種のみ
*ただし、基礎疾患のある児(慢性呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、神経疾患、血液・代謝性疾患―喘息・糖尿病を含む、免疫不全)に関しては2回接種を推奨します。
実際にインフルエンザに罹っていない子どもでは「重症化予防」。罹ったことがある子どもたちへは「発症予防」が根底にあります。
6か月から3歳未満
- インフルエンザに今までに、罹っていなければワクチンを接種しても発症予防効果は期待できません。重症化予防が目的になっています。
3歳以上から8歳
- ワクチン接種は1回でも、2回でも抗体獲得率は大きく変わりません。 インフルエンザに罹ったことがある子どもが多くなる年代ですので、ブースター効果による発症予防が期待できます。ただし、すべてのインフルエンザの型に罹っているわけではないので、ワクチン接種歴の確認が必要です。
9歳以上
- ほとんどがインフルエンザに罹患歴がある年代なので、ブースター効果が期待できるので、ワクチン本来の「発症予防効果」が期待できます。
ややこしいですが、コロナウイルスでばたばたしてるときに、症状の似通ったインフルエンザが流行すると、混乱が予想されます。
インフルエンザだけでも減らしたいと考え、今回の接種回数の変更となりました。
ご理解のほどよろしくお願いいたします。